【トピックス】

“適正化法時代”のあたらしい「マンション管理」

(2005年11月)

2000(平成12)年12月、「マンション管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)が制定され、行政がそれまで以上に積極的に関与するあたらしいマンション管理制度の導入されました。

分譲マンションは個人の私有財産であり、基本的にその管理は所有者の自己責任にゆだねるべきものです。しかし、一方で複数の区分所有者によるマンション全体の管理にはさまざまな困難がつきもので、またマンション管理が適正におこなわれない状況を放置すると、マンション居住者の安定した生活をおびやかすだけでなく、周辺の住環境や都市環境にも支障をきたすことになります。

そこで新法の登場となったわけですが、法律上の用語として「マンション」を定義し、マンション管理会社の登録制度によって不適格な管理業者を淘汰し、またマンション管理士と管理業務主任者というふたつの国家資格をあらたに設置するなど、適正化法はマンションをとりまく環境に大きな影響をあたえました。この、いわば“適正化法時代”の到来によって、分譲マンションにおける「マンション管理」はあらたな対応を迫られているといえます。

マンション関連3法の整備

日本国内のマンションストック数は、マンション管理適正化法が成立した2000(平成12)年の段階で約380万戸、2001年末には400万戸を超えたと推計されています(国土交通省マンション供給状況推計)。およそ1000万人以上の人びとがマンションに居住していると推測され、これは日本の総人口の約1割にもあたります。都市部を中心に持ち家住宅として定着してきた分譲マンションにおいて、快適な居住環境を実現することは、その数のうえで社会的な要請になったといえるでしょう。

同時に、1970年代に大量供給がはじまった初期のマンションは、築後すでに30年を経て老朽化が進行しています。こうした古いマンションの適切な修繕または建て替えをすすめ、良質なストックの形成と活用をはかることが、現在の急務となっているのです。

こうした状況を反映して、「マンション管理適正化法」(2000年12月)、「マンション建替円滑化法」(2002年6月)、「改正区分所有法」(2002年12月)というマンション関連3法が立てつづけに成立し、関連法規の整備が急ピッチですすめられてきました。

マンション問題へのとりくみは社会的要請

このように、矢継ぎ早ともいえる速さでマンション関連3法が成立した背景には、マンションを社会的資産としてとらえ、その資産価値をできるだけ保全するとともに快適な居住環境を確保することが、社会的にも要請されているという認識があります。

先にふれたとおり、これまでに供給されてきたマンションの累積戸数(マンションストック)は、すでに400万戸を超えています。さらに、毎年あらたに供給されるマンションの新規供給戸数(マンションフロー)は、1979(昭和54)年以降、年間10万戸を下まわることはなく、2001(平成13)年には過去最高の20万3000戸を記録しました。マンションのフローとストックの増加は、都市部を中心とするものの全国的な傾向であり、1990年代にはじまる長期経済低迷によっても大きく左右されてはいません。

これは、土地利用の高度化と職住接近という利便性を追及した当然の帰結であり、持ち家を促進してきた融資制度や税制の整備という国策があと押ししてきた社会現象であるといえます。もはや、マンションを抜きにしてわが国の居住形態や住宅政策をかたることはできません。

そこで重視されるようになったのが、良質なマンションストックを社会的資産として形成するという認識であり、それを長期にわたって維持するために適正なマンション管理を推進するという必要性なのです。

良質なマンションストックの形成と維持

多くのマンションは区分所有という形態をとるため、建て物の維持管理を図るうえで、区分所有者間の意思決定や合意形成がむずかしいだけでなく、構造上の技術的判断をくだすためには専門家の助言が不可欠です。また、マンションの居住環境と周辺の都市環境を良好に保つうえで、管理組合による主体的な管理運営を継続的におこなう必要があり、行政と専門業者などによる適切な指導や支援が期待されます。さらに、老朽化したマンションは、適切な判断による修繕もしくは建て替えの企画と実施が必要となります。

こうしたマンションにかかわる一連の事項を想定して整備されたのが、改正区分所有法とマンション管理適正化法、マンション建替円滑化法の3法案と関連法規でした。その目的をひとことにまとめれば、「良質なマンションストックの形成と維持」であるといえるでしょう。

このながれのなかで、「改正標準管理委託契約書」(2003年)、「改正マンション標準管理規約」(2004年)、「マンション標準管理指針」(2005年策定予定)など、マンションの管理と運営をすすめるうえで参考となる具体的な指針が国土交通省により公表されてきました。

国と地方自治体は、マンションの実態を把握し適切な施策を実施することが義務づけられました。こうしたあたらしい方向性の周知がまだ不十分であるとはいえ、分譲マンションの区分所有者と管理組合は否応なく対応がもとめられることになります。同時に、マンション管理上の諸問題には、今後行政をもっと積極的に利用していくことが得策だといえるでしょう。

参考: 
国土交通省のホームページ
財団法人マンション管理センターのホームページ

関連ニュース: 
分譲マンションの実態調査(2005年11月21日)


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