(2005年7月)
市川市は、2005年10月から2006年3月まで、市内を巡回するコミュニティバスの社会実験運行を行なう予定です。運行ルートは、市北東部(大野・柏井・北方周辺)と市南部(妙典・行徳・南行徳周辺)のふたつ。南部ルートは、妙典駅から浦安市川市民病院(浦安・当代島3丁目)をむすんで行徳地区を縦断し、いちぶはメディアパーク市川(鬼高1丁目)まで延伸される計画です。
コミュニティバスとは、おもに高齢者や障害者など交通弱者への移動手段提供、および既存の鉄道・バス路線から遠い交通不便地域の解消などを目的とする地域密着型のバス運行サービスをさします。地方自治体が運営または支援することが多く、民間単独では成立しない低需要区間や道路がせまい街路地区などで、福祉や住民サービスの一環として小型バスや低床バスを運行させる例が、近年全国的に増えています。
日本初のコミュニティバスは、武蔵野市(東京都)が1994年に交通空白・不便地域の解消を目的として運行を開始した「ムーバス」といわれています。ムーバスの試みは全国の自治体に大きな影響をあたえ、自家用車の普及にともない業績が悪化したバス会社が1980年代から不採算路線の廃止をすすめる一方で、あたらしい公共交通システムのありかたをかんがえるきっかけとなりました。
最近では、市街地の商業施設をむすんで地域経済活性化をはかったり、通勤時の道路交通渋滞の緩和や環境保全を推進するなどの目的で導入した成功事例が報告されるなど、コミュニティバスは独自の進化をとげているといえます。
近隣の例としては、浦安市が2002年からコミュニティバス「おさんぽバス」の実証運行を開始。2年後の2004年には、当初の予定よりも早く利用者100万人を達成し、現在、民間バス事業者による運行を基本とするバス路線網再構築や路線バスのコミュニティバス化などの検討を開始しています。また、京成バスは、県内の千葉市および八千代市の協力・援助をもとにコミュニティバスを運行。いわゆる「100円バス」による公共施設の利用促進やお年寄りや車を持たない人の外出機会の増加をはかっています。
コミュニティバスの導入や実験がすすむ一方、その存続が困難となるばあいも少なくありません。県内では、野田市が1993年におもに福祉目的の運行を開始したものの、1997年には廃止して福祉タクシー券の充実に方向転換しています。また、千代田区(東京都)でも、1997年に区立施設巡回バスを導入したものの、1998年に福祉バスに用途を変更しました。
国土交通省では、コミュニティバスに関するガイダンスで、「導入した後でも、利便性が悪い、かえって交通渋滞の原因になった、などの問題が発生すると、バス自体の必要性が問われ、存続が困難になる場合」があると指摘します。また、運行ルートや頻度、運賃、利用対象者について「地域に適合したものを設定することが重要」であり、「競合する交通事業者(バス、タクシー等)については、理解と協力が得られるように、きめ細かな対応が必要」としています。
全国的にみると遅めともいえる市川市の試みが成功するかどうかは、今回の社会実験運行の趣旨と日程を市民に周知し、その結果得られたデータの検討とフィードバックをいかに将来に生かすかという今後のとりくみにかかっているといえます。詳細の問いあわせは、市川市道路交通部・交通計画課(電話334-1111〜内線5513/5514)まで。
図1: 北東部ルート運行路線図(市・交通計画課配布資料)
図2: 南部ルート運行路線図(市・交通計画課配布資料)